2023-01-01から1年間の記事一覧

夜の手触り——鈴木涼美『トラディション』

中には何度かこの紙の上にだけ現れて、姿かたちを見せることなく消えていく名前もある。いずれにせよどの名前も、ぎざぎざした人生を背負うものではなく、つるんとした作り物の響きしか持たないのだから、私は平気でそれらの文字に線を引いたりバツ印をつけ…

2023/11/29

働いた。この感じだと年の瀬は死だな。

2023/11/25

ハイライトメンソールの口当たりの良さ、出会ってしまったと思った。しかしやけに酔いやすくて酒に合ってないと思った。煙草! めぐりあいたい!

2023/11/22

仕事のうえで人を鼓舞する、励ますのは比較的得意だが、自分で自分を鼓舞するのが苦手であることに気づいてへこんだ。セブンのうずらの卵が売り切れてて撃沈した。

2023/11/08

金原ひとみ『腹を空かせた勇者ども』を読む。終盤味の薄くなったオレンジジュースに文学的なフェティッシュを感じて嬉しくなってしまう。たとえば、『桜の園』や『ブレックファスト・クラブ』における精神的去勢を描くワンショットなんかを思い出したりして…

2023/11/07

ウィンストンのスパークリングメンソールを吸い尽くしてしまってつらい。もう7-8年ちかくお世話になっていたのにそれはないよ。直感でヴァージニアのローズを吸ってみたけど、違った。燃焼の速度に嫌気がさす。学生のとき吸ってたパーラメントのメンソールに…

2023/10/30

Kindleで何年か前に買った金原ひとみ『AMEBIC』の、何年か前に自分がハイライトを引いていた部分。 生きるために必要な仕事というもののために、生きる時間を割くという事は、とてつもなく儚く、切ない。 金原ひとみ『AMEBIC』 残業終わりの夜汽車にロマンの…

2023/10/11

このタイミングでLampの新譜。また生きていける! ラスト・ダンスLampJ-Pop¥255provided courtesy of iTunes

2023/10/07

疲れていると疲れている人が見えてくる、疲れていても相手に疲れを悟らせず、笑顔をふりまいてくれる人の尊さ。今これを書きながら槇原敬之「太陽」が流れていて、「誰かのためを幸せを 当たり前のように祈りたい」というフレーズ。すっと歌詞が入ってくる感…

2023/10/02

帰りの電車で『左川ちか詩集』を読む。10年ぶりくらいに「雪線」の熱情に撃たれて疲れが吹き飛ぶ。でもそんな詩の終わりの言葉には目を向けていなかった。 何がいつまでも終局へと私を引摺つてゆくのか。(左川ちか「雪線」) ほとばしる冒頭の思いとは裏腹…

2023/09/27

忙しい。「すべての労働は売春である」(ゴダール)なんとなく反芻している。売春ほど非対称な「忙しさ」なのかといわれると、無論そんなことはない。働きながら売春、売春と憎悪を堰き止めるのも、売春に申し訳ないだろう。 ちなみに「ブルセラ」という商品の…

2015/05/07

ディケンズの"A Madman's Manuscript" (1837)は、「狂人」に女性を売り飛ばした男たちが、彼の手記によって告発される形式を採っている。例えば、 "I saw a smile of triumph play upon the faces of her needy relatives, as they thought of their well--p…

2023/09/21

働いた。ずっと働いていると蛍光灯の光がどんどん貪婪に射してくる。誰もいない暗いオフィスは安らかで、「プールサイド小景」のような不安はない。疲れると匂いと光へ敏感になって、剥き出しの神経を世界に曝してしまっていると思う、ボードレールが風邪を…

村田沙耶香「信仰」のための覚書

[...]信徒はそう単純に「信じる」という行為でもってその生活をきれいに一貫させているわけではありません。[...]いわゆる無心論者や宗教批判者たちも気を付けねばならない点だと思います。しばしば無心論者や宗教批判者たちは、信徒たちによる「私は信じて…

2023/08/30

働いた。自分が撮られた写真を見返していて、白髪の多さに驚く。Lシステインの摂りすぎか。でもせっかく白く生まれたので、昔はコンプレックスだったけど、白いまま死んでいきたい。白皮症までいかないし、そこまで白い肌にフェティッシュはないけど。小5く…

2023/08/24

花屋に花を頼むのはどこか誇らしい。自分の声音が普段より弾んでいる気がした。 サラマーゴ『見ること』を読み、あまりの素晴らしさに自分にはもったいない物語だと思う。街が変わりつつあるというよりはむしろ、自分が変わりつつあることが街の景色に浮かぶ…

2023/08/20

この国の住民は憲法で保障された権利を主張する健全な習慣を持たないため、自分たちの権利が停止状態になっていることに気づかないのが当たり前で、むしろ自然ですらあるのだ。 ジョゼ・サラマーゴ『見ること』雨沢泰訳(2022 河出書房新社 49頁) 『白の闇…

2023/08/20

2023/08/18 ふたつの図書館を、またいで使っているのですが、初めて返却館を間違える。もちろん夏のせい。 サマージャム ’95スチャダラパーヒップホップ/ラップ¥255provided courtesy of iTunes 手慣れているのか、スタッフの方は電話の声音がとてもやさし…

2023/08/17

無論、夏はビールにかぎるが、ここ最近飲んだあとお腹が弱火の炙りみたいに燃えている感じがして調べると膵臓系がやられている可能性があって怖くなり自重。会社の冷蔵庫にいつも入っている上司のウィルキンソンを思い出し、これを飲んでみると喉越しがビー…

表面張力(切実さ/軽薄さ)——乗代雄介『それは誠』

絶対優勝。 乗代雄介を読んでいると自信が出てくる。それは自分にも世界を愛せるんじゃないかってことで、誠くんの言葉を借りるなら「何かがこみ上げてくる気分」*1ということになるだろう。もちろん誠くんからすれば、こうした胸の高鳴り、高揚感から湧き立…

2023/07/21

とにかく遠く離れた街の話を聞くのが好きだ。そういった街を、僕は冬眠前の熊のように幾つも貯めこんでいる。目を閉じると通りが浮かび、家並みが出来上がり、人々の声が聞こえる。遠くの、そして永遠に交わることもないであろう人々の生のゆるやかな、そし…

2023/01/14

百が生まれたばかりのころ、乳を吸われながら、近い、と思った。この子となんと近くにあるのだろう。腹の中に宿していたときよりも、なお近いように思った。可愛いだのいとおしいだの、そんなものではなかった。ただ、近かった。 関係は、近くない。遠い、と…

道があまりにも大きくて困ります——福永武彦「冥府」

最初はカフカの二番煎じみたいでうんざりしかけた。雑に要約すれば暗い『ワンダフルライフ』であって、死後の世界をテーマに記憶の想起/忘却のドラマが展開される。主体性を剥奪されたうえで、ぼんやり出番を待ち続ける(出番はやってこないのだが)生のあ…