2023/10/02

帰りの電車で『左川ちか詩集』を読む。10年ぶりくらいに「雪線」の熱情に撃たれて疲れが吹き飛ぶ。でもそんな詩の終わりの言葉には目を向けていなかった。

何がいつまでも終局へと私を引摺つてゆくのか。(左川ちか「雪線」)

ほとばしる冒頭の思いとは裏腹に、一気に冷却されるような落ち着きを払ったセンテンスで締められるなんてイメージはなかった。感嘆符の散弾銃を激らせ溢れる情熱の眩さに撃ち抜かれた者からすると、熱りも冷めた、最後の言葉が10年の時を経て重しとなって現れたことは意外だった。私が引き摺っていくのではなく、あくまで私を引き摺っていく抗い難い引力のことを詩性というのかもしれないし、そうして引き摺られた跡のことを詩というのか、しかし詩の跡は雪の跡のような儚さ。そんな跡を丁寧に彫琢していく営為の切なさ。